不動産投資コラム

賃貸借契約書の特約内容は何がどこまで許される?

行政書士棚田 健大郎
賃貸借契約書の特約内容は何がどこまで許される?

通常、賃貸借契約書については仲介業者が作成すると思いますが、私が実務をやっていたころは大家さんが自作した特約事項を盛り込むよう指示を受けたことがよくありました。

なかには、室内での自由を制限するような特約を目にすることもありましたが、実際のところどの程度までオリジナルの特約は許されるのでしょうか。

そこで本記事では、過去に私が目撃したびっくりする特約をご紹介しながら、法的に許される境界線について解説したいと思います。

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ケース1:部屋でキムチを製造しない

都内では数年前に比べて外国人留学生が増えていて、それに伴って賃貸需要も高まっています。
今はコロナの影響で特殊な状況ですが、コロナ禍が終われば再び需要は戻ってくるでしょう。

そんななか、文化の違いに戸惑う大家さんも少なくありません。
私が目撃した特約の中で一番衝撃だったのは「室内でキムチを製造しない」という特約です。


なぜそのような特約を契約書に盛り込むことになったのか大家本人に聞いたところ、以前入居していた留学生が室内で自分用にキムチを漬け込んだらしいのですが、その臭いが部屋に染みついてしまい、退去した後も臭いがとれず、次の入居者が決まるまでにかなり苦戦したとのこと。

確かに本格的なキムチを狭いワンルームで製造すると、たとえそれが自分用だったとしても臭いが染みつくことは容易に想像できます。

ただこの特約、法的に有効なのでしょうか。
そもそも、キムチを製造したかどうか大家が確認するすべはあるのか
スーパーでキムチを買ってきても、毎日消費していればそれなりに臭いはつく可能性があります。それとどうやって区別するのかという問題です。

また、家で何を食べようと本人の自由ですから、個人の自由を不当に制限する特約は無効とみなされる可能性も十分考えられます。

よってこのような特約は賃貸借契約書に盛り込んだとしても、実効性に乏しく法的に絶対的な効力を発揮するとは言いにくいです。

賃貸借契約書ではなく、「入居のしおり」のようなものを別途作成してそこに内容を記載し、入居時に賃借人と読み合わせをしてお願いベースで話をするほうが、抑止効果があると思います。

ケース2:室内禁煙の特約


賃貸経営をしていくうえで大家の頭を悩ませるのがタバコです。
室内でタバコを吸うと、臭いが残るだけでなく壁紙が黄ばんでしまうことから、大家が敬遠する傾向にあります。

私もこれまで賃貸借契約書の特約に「室内での喫煙は不可とする」といった文言が書かれているケースを何度も経験しました。
室内喫煙を制限する内容については、一定の合理性があるのでそれなりの有効性はあると考えますが、この特約を入れるのであれば次の点に注意が必要です。

ベランダ喫煙によるトラブル

室内での喫煙を制限することで、入居者がベランダでタバコを吸うケースがよくあります。
タバコの煙は風にのってほかの部屋のベランダに流れていくので、ほかの部屋の住人から洗濯物に臭いが付いたなどのクレームが発生する恐れがあります。

換気扇下での喫煙に注意

禁煙の特約がある部屋では、入居者がキッチンの換気扇の真下で喫煙するケースがよくあるのですが、喫煙量が多いといくら換気扇を回しても周りに臭いが付いたり壁紙が黄ばんだりします。
また、換気扇自体もヤニで汚れてしまい、ルームクリーニング業者から別料金を請求されることもあるため注意が必要です。

ですので、この特約を盛り込むのであればこれらの点についても、あらかじめ賃借人に釘を刺しておいたほうがいいでしょう。

異性の宿泊を制限する


例えばワンルームで女性の賃借人だったとして、男性を部屋に連れ込むような行為を禁止する特約です。
この特約については、違法か合法かは状況によって判断が変わってくると考えられます。

例えば、物件自体が女性限定の物件で他の賃借人もそれが安心で借りているような物件の場合、男性を連れ込む行為に制限をかける特約には一定の合理性があるとも考えられるでしょう。

対して、一般的なアパートに当該特約を盛り込んだとすると、有効性については疑問が残ります。
事実上同棲と認められるような状態であれば別ですが、単に遊びに来るくらいの場合まで禁止することは現実的に難しいでしょう。

まとめ

賃貸借契約書の特約事項は、大家や管理会社の判断でその物件にあった独自のものを取り入れることについて私は賛成派です。

ただ、合理的な理由なく賃借人の利用を制限する特約については、盛り込んだとしても法的に認められない可能性がありますので十分注意しましょう。

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棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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