避けられない設備故障…家賃を下げろと言われたら?
賃貸オーナーのみなさん、入居者から設備の故障を理由に「家賃を下げろ」と要求されたらどうしますか?そもそもこのような要求には応じなければならないのでしょうか?また、応じるとした場合、どのくらいの金額が相場になるのでしょうか。
今回は、賃貸経営をしていて設備故障が発生した場合の「理想的な対応の流れとポイント」、及び「借主から賃料の減額請求をされた場合の対処対策」などについて、全3回に分けて解説したいと思います。
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入居者に家賃減額を要求されたら?
賃貸経営をしていると、避けて通れないのが「設備故障」です。
アパートやマンションは日々劣化していきますので、付帯設備についてもどこかのタイミングで故障し、修理や交換が必要になります。
通常は、素早く対応すれば大きな問題にはなりませんが、故障箇所によっては、借主から家賃の減額請求をされる可能性があるため注意が必要です。
貸主には「通常の使用ができる状態」で部屋を貸す義務がある
賃貸経営は部屋を貸して家賃を得るという一種の商売ですので、貸主は借主に対して「通常の使用ができる状態」で部屋を貸す義務を負っています。
そのため、物件の設備が故障した場合は、速やかに修理や交換を手配して、借主が常に問題なく居住できる環境を維持しなければなりません。
ところが、何らかの理由で手配が遅れてしまい「通常の使用ができる状態」ではない状況が続いた場合は、借主から通常の使用ができないことに対する損害賠償等として家賃の減額を請求される可能性があるのです。
借主からの故障クレーム対応の基本的な流れ
では、実際に所有している物件で設備故障が発生した場合、どのような流れで対応が進むのでしょうか。
ここでは、最も理想的な流れをベースに、貸主としての対応のポイントについて、段階ごとに分けて解説します。
1.借主からの連絡
自主管理の場合、設備故障が発生すると借主から貸主あてに電話がかかってきます。
借主に電話番号を教えたつもりがなくても、賃貸借契約を結ぶ際の重要事項説明において、不動産会社から借主に対して故障時の連絡先として告知されていますので、電話がかかってきます。
賃貸管理を管理会社に委託している場合については、故障時の窓口は管理会社になるため、管理会社が借主から一旦連絡を受けた後、管理会社から貸主に対して連絡が入ります。
自主管理の場合:借主⇒貸主
管理を委託している場合:借主⇒管理会社⇒貸主
対応のポイント:必ず携帯電話の番号を教えておく
設備故障のクレームについては、対応にスピード感が求められます。
とくに水回りの不具合については、対応が遅れるとさらに被害が拡大するため、発覚したらできる限り早く対処しなければなりません。
ただ、貸主の連絡先として自宅の電話番号しか教えていないと、借主からのSOSにすぐに気が付くことができない場合があります。
例えば、ちょうど旅行に行っている間に設備故障が発生した場合、携帯電話の連絡先を教えていないと、旅行から帰ってくるまで状況が放置されてしまうのです。
管理会社に管理を委託している場合でも、費用の了承を貸主から得られなければ、修理や交換の手配がストップしてしまう可能性もあります。
そのため、賃貸経営をする場合は、いつでも連絡がつく携帯電話の番号を借主や管理会社に伝えておくようにしましょう。
2.業者の手配
故障や不良の内容に応じて、適切な業者に対応を依頼します。
対応のスピード感はもちろんですが、故障内容に応じて適切な業者を手配することもとても大切です。
修理対応が可能なのに、すぐに交換ばかり手配していると、経費がかかりすぎてしまい賃貸経営自体が赤字になってしまいますので、まずは症状を細かく聞いた上で、必要な業者を手配しましょう。
対応のポイント:故障箇所は詳しく聞いて、できれば写真ももらう
設備故障を素早く解決するポイントは、できる限り1回の業者訪問で解決することです。
例えば、修理不能な状態なのに、修理業者を手配して現地に行ってみたら「交換するしかありません」と業者から報告され、そこから交換で手配すると合計で2回は現地に業者を手配しなければ解決ができません。
1回の手配で解決するためには、現地で何が起きているのかを、最初の段階で正確に把握することが大切です。
このように細かく確認することで、1回の対応で解決することが可能になり、改善までの時間が短縮できるのです。
3.訪問日時の打ち合わせ
対応業者に連絡がついたら、訪問日時の打ち合わせをします。
室内の不具合であれば、借主が在宅中でなければ施工ができないため、あらかじめ借主の要望にあわせて現地に業者を向かわせることが重要です。
通常は、手配した業者に借主の連絡先を伝えて直接やり取りをしてもらうことが一般的です。
対応のポイント:日程が決まったか必ず確認を
設備故障が重大なクレームに発展する第一のチェックポイントが、このステップ3です。
貸主としては速やかに業者を手配したつもりでも、業者と借主間の連絡調整がうまくいかなければ、そこで時間を使ってしまいます。
借主に対しては「業者から直接連絡させるので、日時を調整してください」と伝えていたにも関わらず、業者からの連絡が遅くなったりすると、そこですでにクレームになってしまう可能性があるのです。
最近では、知らない電話番号だと電話に出ない借主もいますので、業者に日時の調整を依頼する時には、必ずその日のうちにいつに決まったか確認するよう徹底しましょう。
4.業者の現地訪問
現地訪問日当日は、できる限りその日のうちに不具合箇所を改善することを目標とします。貸主自ら立ち会う必要はありませんが、必ず現地の業者と連絡がとれるよう待機しておくことが重要です。
対応のポイント:あらかじめ金額を承認しておく
故障箇所によっては、現地に行ってからでないと詳細な修理費用が見積もれないことがあります。そのような場合は、先に業者からおよその金額を聞いておき、ある程度余裕のある金額をあらかじめ承認しておくと、当日の手間が省けるため、対応がスムーズになります。
万が一現地からの連絡に気がつかないと、金額の承認が得られなかったとして、施工をせずに帰ってしまうこともありえますので注意しましょう。
以上が、理想的な設備修繕対応の流れです。
このように対処できれば、借主から家賃減額請求をされることはまずないでしょう。
これらの流れを早ければ当日中に完結できればよいのですが、状況によってはそうできないことも度々あります。
では、そのような場合に入居者から「家賃減額請求」をされたら、どのように対処すればよいのでしょうか。
次回詳しく解説いたします。
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第1回:避けられない設備故障…家賃を下げろと言われたら?
- 第2回:設備故障による家賃減額の考え方と計算方法について
- 第3回:家賃減額請求の防止法と民法改正がもたらす影響