不動産投資コラム

【民泊物件】売主・買主の双方にメリット大のM&A手法

行政書士石井くるみ
【民泊物件】売主・買主の双方にメリット大のM&A手法

以前まで解説 した通り、民泊物件の売買には、新たな許認可の申請、様々な有形・無形の資産の譲渡に関する交渉といった複雑な論点があり、当事者である売主・買主はもちろん、その仲介に携わる宅建業者にも大きな負担がかかります。
この点、民泊物件が法人によって所有されている場合には、
1 株式譲渡
2 吸収分割
3 新設分割

などを活用すると、売主・買主の双方にメリットの大きい円滑な事業の承継が可能となります。
今回は旅館・ホテルのM&Aで用いられる手法について解説します。

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売買以外の選択肢-M&A手法の活用

1 株式譲渡

株式譲渡は、民泊物件を所有する会社の株式(合同会社の場合は持分)の全部を、売主から買主に譲渡する方法です。

民泊物件の所有者及び旅館業の営業者(法人)に変更はないため、不動産売買と比べて、

①新たな旅館業の許可申請が不要となる
②物件に付随する資産や契約も包括的に承継される
③不動産取得税、登録免許税などの不動産流通税の負担が生じない

といったメリットがあります。
株式譲渡の結果、会社の代表者が変わった際には、10日以内に新しい代表者の氏名を都道府県知事等に届出を行う必要があります。

対象会社が民泊物件の所有以外の事業を営んでいる場合

株式譲渡は、民泊物件の譲渡においてシンプルでメリットの大きい手法ですが、対象会社が民泊物件の所有以外の事業を営んでいる場合には、会社持分を直接譲渡することはできません。
そのような場合には、会社分割(吸収分割又は新設分割)の手法を検討します。

しかし、現に旅館業の許可を受けている物件の譲渡において、その物件が個人所有の場合は不動産売買しか選択肢がありません。
取引状況や買主・売主の希望等に応じ、不動産売買、株式譲渡、吸収分割又は新設分割のいずれかの方法を選択するとよいでしょう。

民泊事業の将来の売却価値を高めるアドバイス

民泊物件を取得しようとする買主に対して、あらかじめ旅館業許可物件の所有を目的とする法人を設立し、将来は法人ごと事業を売却する出口戦略をアドバイスすることも有益です。

民泊物件の譲渡の仲介またはコンサルティングに携わる場合には、その物件特性から生じる様々な留意点を踏まえ、売主に対しては最適な譲渡方法を提案するとともに、買主に対しては将来の事業の売却価値を高める適切な所有方法をアドバイスするよう心がけましょう。

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石井 くるみ

行政書士・宅地建物取引士

石井 くるみ

行政書士・宅地建物取引士

日本橋くるみ行政書士事務所代表。東京都行政書士会中央支部理事。民泊・旅館業に関する講演・セミナーの実績多数。著書「民泊のすべて」(大成出版社、2017年度日本不動産学会著作賞(実務部門)受賞)

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