定期借家 [ていきしゃっか]
定期借家とは、更新のない賃貸借契約である「定期借家契約」を結ぶことを指します。定期借家の貸主は、書面の交付および説明によって、契約更新がないことをあらかじめ借主に知らせなければなりません。
定期借家契約において借主が契約更新を要求することはできませんが、貸主が再契約を了承した場合は、再度賃貸借契約を結ぶことも可能です。
契約時・期間満了時の注意点
定期借家は、居住用賃貸物件の契約としてはそれほど一般的ではありません。
それゆえ、借主には定期借家について十分に理解させた上で契約する必要があります。
定期借家契約を締結する際の注意点、期間満了時の注意点については以下の通りです。
1.契約時
賃貸借契約書とは別に、定期借家であることについての書面を作成し、借主に提示・説明する必要があります。
賃貸借契約書のみで契約してしまうと、通常の賃貸借契約を締結したものと見なされてしまいますので注意しましょう。
もちろん賃貸借契約書にも、期間満了の時期と更新が無いことを記載しておかなければなりません。
定期借家では、期間満了にも関わらず借主が退去しないといったトラブルが発生した時のため、契約書の類はすべて公正証書で作成するのが最も確実です。
2.期間満了時
定期借家契約では、期間満了によって契約は確定的に終了します。
それでも貸主は、遅くとも期間満了の6ヵ月前までには、定期借家契約の期間満了について借主へ通知しなければなりません。
期間満了通知は、賃貸借契約書に記載があっても無くても、貸主の義務として行わなくてはならないことです。
ただし、満了通知が必要なのは契約期間が1年以上の定期借家契約ですので、1年未満の期間であれば通知の必要はありません。
そのため、364日の定期借家契約で運用している大家さんもなかにはいるようです。
定期借家契約が有効なケース
定期借家契約は、以下のようなケースでよく利用されます。
1.自宅を空ける年数が決まっている場合
海外赴任などで自宅を数年空けるという場合に、自宅をそのまま無人にしておくことは防犯面や管理面で問題があります。
住宅ローンの返済途中であれば、住んでいない間もローンを払い続けることが負担となる場合もあるでしょう。
このような場合には、定期借家契約で契約期間を定めた上で借主を募集することができます。
2.建物を取り壊すまでに一定期間待たなければならない場合
さまざまな理由から建物を取り壊すことにした場合、諸事情によって取り壊しまでに一定期間待たなければならない、ということも起こり得ます。
もし、居住する点で問題がないのであれば、取り壊すまでの間は定期借家として貸すこともできるでしょう。
3.入居希望者の支払い能力や素行に疑念がある場合
定期借家でない通常の賃貸借契約の場合、よほどの理由がない限りは契約を更新しなければなりません。
入居希望者がいても賃料の支払い能力や生活態度などに不安がある場合には、定期借家契約を結んで様子を見て、問題ないと判断した場合にのみ通常の賃貸借契約に切り替えるという方法もあります。
不動産投資で定期借家にする際の注意点
定期借家契約は、普通の賃貸借契約と違って期間が満了すれば明け渡してもらえるため、貸主としては安心して貸し出すことができます。
ただ、借主側からすると特殊な契約になるため、あまり好まれません。
また、契約に先立って行う重要事項説明についても、説明する内容が増えるため、不動産会社もあまり積極的に取り扱おうとはしない可能性があります。
よって、定期借家契約については、あくまで上記のようなケースについて利用するものであると認識した方がよいでしょう。
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監修:棚田 健大郎