敷居 [しきい]

敷居とは、ふすまや障子、引き戸などの滑りをよくするために、下に渡した溝やレールの付いた横木のことです。

開き戸や開放の場所に取り付ける、溝のない無目敷居(むめしきい)というものもあります。
押し入れのように上下の段の真ん中の敷居のことは中敷居といいます。

また、ふすまや障子、引き戸などの上にあるレールは、敷居ではなく正確には鴨井(かもい)です。
昔から敷居は家の内と外の境界として、重要な意味を持っています。

敷居に使われる木材

敷居には一般的に松が多く使われますが、栂(ヅカ)や桜あるいは檜(ヒノキ)、杉などもよく使われます。

なぜ敷居を踏んではいけないのか

昔から、敷居を踏んではいけないといわれますが、敷居を踏んではいけない理由にはいくつかあります。

1.家や家人を重んじるため

「敷居をまたぐ」といった表現からも分かる通り、敷居はその家の象徴とされています。
敷居を踏むことはその家や家人を踏むことになり、大変失礼に当たるのです。

2.家を大切にするため

敷居を踏むと、家の建付けが歪むことさえあります。
家を大切にするためにも、敷居は踏んではいけないのです。

敷居

3.境界を越えないようにするため

敷居は部屋の内と外、家の主人と客、といった境界を表す役目も持っています。その境界を乱すことは相手の生活を乱すことであり、失礼になります。
境界を越えないためにも、敷居を踏んではいけないといえるのです。

「敷居が高い」という言葉について

「敷居が高い」という言葉は、現在では使う人の年齢層によって違った意味で使われるようになってきています。

伝統的な意味では、「相手に対し、不面目・不義理をしてしまい、申し訳なくて相手の家に行けない」という気持ちを表すときに使われていました。

しかし現在では、「高級すぎて行きづらい、上品すぎて入りにくい」といった意味合いで使う人のほうが多くなっているのです(文化庁の平成20年度国語に関する世論調査より)。

対して、「敷居が低い」という人が多くいますが、これも伝統的にはなかった表現です。

「ハードルが低い」と同じ意味で使われるようですが、この使い方ですと本来「敷居」という言葉の持つ、「家の内と外の境界」という意味合いが薄れてしまっています。

言葉は生き物で変化するものなので仕方ありませんが、本来敷居とはその家の象徴であり、家の内と外の境界線であり、出入り口を表すものである、ということは覚えておきたいところです。

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監修:棚田 健大郎