ネット利回り [ねっとりまわり]
ネット利回りとは、不動産投資において家賃収入から経費を差し引いた利益の、物件価格に対する割合のことで、実質利回りともいいます。ネット利回りの計算方法は、以下のとおりです。
(年間家賃収入-年間諸経費)÷(物件購入価格+物件購入時の諸経費)×100
実際にかかる経費を収入から控除した上で計算するため、ネット利回りは現実の利回りとほぼ一致するといえます。
ネット利回りの計算に必要な数字
ネット利回りに対して、経費を一切考慮に入れない利回りのことを「グロス利回り(表面利回り)」といいます。グロス利回りとは、年間家賃収入を物件価格で割っただけの利回りなので、ネット利回りよりも数値が高くなりますが、実際の利回りを反映しているわけではないので注意が必要です。
グロス利回りについては、物件広告などに記載されていますが、ネット利回りについてはあまり記載されていないため、自分自身で計算してシミュレーションすることが重要です。
ポイントを1つずつ見ていきましょう。
1.年間家賃収入
通常、利回りを計算する時には、満室状態の年間家賃収入で計算します。
家賃収入については、借主が退去してから次の借主が決まるまでの間の空室期間は損失となるのですが、単に利回りを計算する際には満室を想定して計算するのが一般的です。
2.年間諸経費
予期せぬ修繕費や、空室の時の家賃が入らない分の金額、固定資産税・都市計画税などの税金、管理費、修繕積立金、水道光熱費など、不動産投資にかかるあらゆる経費を盛り込みます。
3.物件購入価格
物件の購入金額です。
4.物件購入時の諸経費
物件を購入するためには、物件そのものの価格だけでなく、仲介手数料、不動産取得税などのさまざまな税金、ローンの融資を受けるための諸費用、司法書士への報酬といった経費がかかるため、これらもすべて経費に盛り込みます。
ネット利回りを計算する際に、盛り込んでおくべき主な経費は以下のとおりです。
- 固定資産税
- 都市計画税
- 諸修繕費用
- 管理費
- 修繕積立金
- 水道光熱費
- 空室損失
実際に計算してみると
では、実際にネット利回りを計算してみましょう。
1.年間家賃から年間諸経費を引く
年間の利益を知るために、1年間で得られると想定される家賃収入から、諸経費を引きます。
例えば、家賃6万円の部屋を10室持っていたとすると、年間家賃収入は720万円です。
税金を含む年間諸経費が200万円とすると、年間家賃収入から年間諸経費を引きますので、720万円-200万円で520万円となります。
2.物件購入価格と購入時諸費用を足す
購入価格が9,000万円で、購入時の諸費用が300万円としますと、9,300万円の費用となります。
3.年間の利益を、物件価格+購入時の諸費用で割る
年間利益が520万円ですから、これを購入にかかった費用9,300万円で割ると、520万円÷9,300万円×100で、ネット利回りは5.59%となるわけです。
利回りの注意点
不動産広告でよく「利回り○○%」という宣伝を見かけますが、これはネット利回りではなく、「グロス利回り(表面利回り)」であるケースがほとんどです。
グロス利回りを実際の利回りと誤解して不動産投資をすると、実際の手元に残る金額はまったく違ってきますので注意しましょう。
ネット利回りの計算で不動産投資の成否が決まる
不動産投資は、投資する段階で利回りがほぼ確定してしまいます。
購入の前段階におけるネット利回りシミュレーションの精度が、投資を成功させるうえで最も重要といっても過言ではありません。
裏を返せば、限りなく正確にネット利回りを計算することができれば、不動産投資で失敗する可能性は非常に低くなります。
ネット利回りの計算において重要なのは「経費」です。
不動産投資をした場合に、実際どれくらいの出費があるのかを事前にきちんと理解した上で利回りを計算できれば、購入したあとに予想外の出費がキャッシュフローを圧迫する心配は少なくなります。
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監修:棚田 健大郎