経年劣化 [けいねんれっか]
年数が経つことによって家や物が朽ちてしまう現象を、経年劣化(けいねんれっか)といいます。
賃貸契約における経年劣化について
賃貸契約において、借主がわざと、あるいは誤って壊したのではなく、自然に劣化してしまった壁紙や畳などは「自然損耗」といい、借主には責任がないとされています。
一般的に、借主が部屋を出ていくときには、部屋を借りる前と同じ状態にして返すことが賃貸契約書によって定められていますが、経年劣化によって損なわれた部分に関しては請求できない範囲となっています。
また、日常生活を送る中で普通に使用していても損耗することを「通常損耗」といい、経年劣化と同じく借主に対しては請求できません。
例えば、家具などを設置していたことによるカーペットの凹みなどは、通常損耗扱いとなります。
経年劣化に含まれるものと含まれないもの
では具体的に、何が経年劣化で、何が借主に責任のある劣化なのでしょうか。
経年劣化に含まれるケース
まず、経年劣化に含まれる主なケースとしては、以下の通りです。
壁紙
壁紙は新しい状態からわずか2~3年で劣化が始まるといわれています。
日の光による日焼け、普通の生活でもついてしまう手垢、冷蔵庫の裏の壁紙についてしまう冷蔵庫焼けなどは、壁紙の経年劣化の代表例です。
フローリング
ワックスの剥がれ、表面の傷みは経年劣化に含まれます。
畳
畳は日焼けしやすいので、早いと張り替えてから数日で劣化が始まってしまうようです。
また、畳の上を歩くときに自然と擦り傷がつくこともあるでしょう。
こうした畳の日焼けや擦り傷は経年劣化とみなされます。
その他
耐用年数経過による設備の故障、浴槽のヒビなどは借主には責任はありません。
これらも経年劣化に入るからです。
経年劣化に含まれないケース
次に、経年劣化に含まれない主なケースとしては、以下の通りです。
壁紙
タバコのヤニや壁紙への落書き、また普通に生活していたら生じるであろう数を極端に超えた画鋲や釘の穴は借主の責任となります。
フローリング
家具の移動や、いすを動かしたときについた傷は、経年劣化とは判断してもらえないことが多いでしょう。
畳
家具の移動でついた傷や、タバコの焦げ跡は、借主の責任となるケースが多いようです。
その他
飲み物をこぼして放置したことが原因でできたシミやカビ、クーラーの水漏れを放置したことが原因でできた壁の腐食、キッチンや換気扇の油汚れ、トイレ・バス・洗面台の水垢などは経年劣化とは認められず、借主に責任があるとされています。
敷金精算で揉めないための有効な対策
賃貸物件の敷金精算においては、退去立会いの際に経年劣化によるものか借主の過失によるものかの判断がつきにくいことが多く、トラブルに発展するケースも少なくありません。
貸主として経年劣化ではなく借主の過失による損傷であることを証明するためには、入居前に室内の状態を写真で撮影して保存しておくことが有効です。
特に、古い物件になってくると入居前からある傷なのか入居中についた傷なのか判別することが難しくなってくるため、写真で保存しておくことで適切な敷金精算が可能になります。
あわせて読みたい
監修:棚田 健大郎